放課後

ひゅうと息を吐く音の方がはっきり聞こえた。
教室で、窓の外は真っ暗で、彼女の手の温度だけがリアルだった。
泣きそうな顔をして、気持ち悪いと思わないでとだけ告げた彼女の唇は思いの他がさがさしていて、あぁこんなかわいい子でも乾燥をするのだ、とぼんやりとしていた。もう少しで切れてしまうのではないか。あの、かわいい唇が。
「リップクリーム」
とだけしか言えない自分を恥じる。私も緊張していたのだろうか、声を出すのに幾分時間がかかり、出した声も掠れていた。

いつもと同じ帰り道で、いつもと同じ喫茶店によって、いつもと同じ彼女が隣にいるけど、私達の気持ちだけはいつもと同じじゃなかった。
気持ち悪いと思わないで。また、彼女は言う。
気持ち悪い?何が?何を?私が?彼女を?どの行為が?
頭の中でわんわんとその言葉が回る。たまらなくなって私は、彼女の手を強く握り締めた。