TTT

初めてキスをしたのは、そのDVDを借りた日。DVDを返した日に初めてセックスをした。
感想を言い合いながらのセックスは滑稽だった。私の上で顔をゆがめて快感をやり過ごそうとしている彼が、映画の中の孤独な男とかぶって見えて途轍もなく愛おしくなった。私は、彼の二番だった。
「あいつはあんまり映画の趣味合わないし。」
「あいつはセックスが嫌いだから。」
「あいつとタイプが違うよね。」
そういわれる度に嫉妬心とうれしい気持ちが交じり合った。複雑だった。
見たことすらない「あいつ」の姿かたちを考えた。私とタイプが違って、セックスが嫌いで、恋愛映画が大好きな「あいつ」は私の中でどんどん膨らんでいった。きっと私と違って小さくて華奢で、真っ白な肌をしていて、髪が長くて、かわいいんだろうな。
彼の家においてある「あいつ」のボディクリームを勝手に使った。
同じものを買って家に置いた。代わりたいわけじゃない。なにか、ひとつそういうきっかけがないと忘れてしまうと思ったから。
だって、私が「あいつ」と同じになってしまったら、彼に捨てられる。


「あいつ」を通じて彼は私を見ていた。
「あいつ」が私みたく彼と同じような映画を見ていたら。
「あいつ」が私見たくセックスがすきだったら。


私なんか、彼の中で二番でもなかっただろう。
いじらしいな。いじらしい私。
きっとそんなひどい男でも忘れることはできないし、どこかであのクリームを見つけたら、あの香りをかいだら、あの、映画の話を聞いたら、私のうえで顔をゆがめている彼を思い出すんだろう。
酷くすきで、酷いあの男の顔を。