「夜の公園」「花束」「夢中になる」

「この前さ」「うん」「この公園で殴られている人を見たよ」「通報しろよ」「いや、痴話喧嘩っぽくてさ」「なんだそんなんか」「でもさ、女の子が花束で殴られていてさ」「え」「うん」「逆じゃね?」「いや、逆じゃなくて」「花束で殴られる、で思い描くとしたらあれだよ。男から女に花束を渡して、その瞬間渡したばかりの花束で殴られる、っていう」「そうだよねぇ。」「うん」「でもさ」

 

煙を吐き出しながら冷たい指先を追いかけて引き寄せた。求めれば求めてくれると思っていて、勝手に一人だけ夢中になってた。

ごめん、とだけ言われて目の前が真っ暗になった。酔っぱらっていい気持ちで歩いていた真っ暗な池のほとりで、人工的に作られた川の音と、さっき彼女から言われたごめんの三文字がぽっかりと浮かんでいた。

ごめんけっこんするんだ。

え。じゃあなに、嫌いになったってことなの?今こうやって二人で歩いているのは、いままで、二人で歩いてきたのはなんだったの?この前ベッドの上でかわいく好きだよって言ってたのはどういうことなの?え?もう一度言ってくれない?りぴーとあふたーみー。

とはもちろん言えず、引き寄せた指を離して足元に煙草を落として、いつもは履かない靴の裏でもみ消して、と順を追って口から出た言葉は、間抜けにも

「いつなの」

という四文字で。返ってくる言葉はずっと「ごめん」の三文字。いや、それが聞きたいわけじゃなくて、なんで、いきなり、そういうことになっているかって。そういう、ことに。

あぁ、そういう、こと。

さっき友人のパーティーでもらった花束を奪って大きく振りかぶる。似合うね。白いガーベラも、大きな白いユリも、彼女に似合う。髪に飾ったらいい。

 

「殴った人も、女の子だったんだよね」